墓じまいは、今のお墓を片づけて遺骨を新しい供養先へ移すことで、法律上は「改葬」にあたり市区町村長の許可が必要です。手順6ステップ、必要書類、親族や菩提寺との進め方まで、法令の条文と公的データに基づいて整理しました。
墓じまいとは、今のお墓から遺骨を取り出して墓石を撤去し、区画を墓地の管理者へ返したうえで、遺骨を新しい供養先へ移すことです。遺骨を移す行為は法律上「改葬」と呼ばれ、市区町村長の許可が必要です。手順は「親族との相談 → 新しい供養先の決定 → 今の墓地への相談 → 改葬許可申請 → 取り出しと撤去 → 納骨」の6ステップ。最初の一歩は役所ではなく、親族への相談です。
要点は次の4つです。
- 墓じまい=「お墓の撤去」+「遺骨の引っ越し(改葬)」の2つの手続きの組み合わせ
- 改葬には、今のお墓がある市区町村長の許可(改葬許可証)が必要
- 改葬は2023年度に全国で166,886件。特別な選択ではなくなっている
- トラブルの多くは順番を間違えることから起きる。親族と菩提寺への相談を最初に
墓じまいとは|法律上は「改葬」
墓じまいという言葉に法律上の定義はありませんが、中心となる「遺骨を移す」手続きは、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)が定める「改葬」にあたります。同法第2条では、改葬は「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義されています。
そして第5条で、改葬を行おうとする者は市町村長(特別区の区長を含む)の許可を受けなければならないと定められています。つまり墓じまいは、気持ちや慣習だけの話ではなく、法律の手続きを踏む作業です。
出典: e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)第2条・第5条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000048
件数で見ると、改葬は珍しいことではなくなっています。厚生労働省の衛生行政報告例によると、2023年度(令和5年度)の改葬件数は全国で166,886件でした。
出典: 厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例」第6表(e-Stat) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040217221
墓じまいの手順|6ステップ
順番が大切です。特に1と3を飛ばして役所や石材店に先に動くと、あとで親族や寺院との関係がこじれやすくなります。
- 親族に相談する — お墓は自分ひとりのものではなく、お参りしてきた親族みんなの場所です。撤去してからの事後報告は、トラブルのもとになります
- 新しい供養先を決める — 遺骨の行き先が決まらないと改葬許可は申請できません。永代供養墓・樹木葬・納骨堂などから選び、受け入れ先の契約書類(受入証明書など)を整えます
- 今の墓地の管理者に相談する — 寺院墓地なら住職へ。改葬許可申請には、墓地の管理者が作成した「埋葬・埋蔵の事実を証する書面」が必要です(施行規則第2条第2項)
- 市区町村に改葬許可を申請する — 申請先は「今のお墓がある」市区町村です(法第5条第2項)。許可されると改葬許可証が交付されます(法第8条)
- 閉眼供養と墓石の撤去 — 遺骨を取り出し、石材店が墓石を解体・撤去して区画を更地にし、管理者へ返します。取り出しの前に閉眼供養(魂抜き)の法要を行うのが一般的です
- 新しい供養先に納骨する — 改葬許可証を新しい墓地・納骨堂の管理者に提出します。管理者は許可証を受け取った後でなければ遺骨を受け入れられないと定められています(法第14条)
改葬許可申請に必要なもの
墓地埋葬法施行規則第2条では、申請書に記載する事項と添付書類が定められています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 申請書に書くこと | 死亡者の本籍・住所・氏名・性別、死亡年月日、埋葬・火葬の場所と年月日、改葬の理由、改葬の場所、申請者の住所・氏名・続柄など |
| 必ず添付するもの | 墓地・納骨堂の管理者が作成した、埋葬・埋蔵(収蔵)の事実を証する書面 |
| 場合により必要 | 申請者が墓地使用者でない場合は、墓地使用者の承諾書など。そのほか市区町村長が特に必要と認める書類(新しい受け入れ先の証明書類を求める自治体もあります) |
出典: e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100024
様式は自治体ごとに用意されています。申請前に、お墓のある市区町村のサイトか窓口で確認してください。
親族との進め方|もめないための3つの順番
国民生活センターには、お墓に関する相談として、改葬の手続きが円滑に進まない事例や、高額な離檀料を求められて話が止まってしまった事例が公表されています。手続きよりも先に、人との合意を整えるのが墓じまいの実務です。
出典: 国民生活センター「墓・葬儀サービス(各種相談の件数や傾向)」(2025年8月更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/sougi.html
- お参りしている親族全員に先に声をかける — 「決めてから伝える」ではなく「決める前に聞く」。お墓に思い入れのある親族ほど、事後報告は裏切りに映ります
- 「お参りできる形は残る」ことを示す — 反対の多くは「先祖を捨てるのか」という感情から来ます。新しい供養先の資料を見せ、お参りの場所が残ることを具体的に示すと話が進みやすくなります。なお、合祀(他の方の遺骨と合わせて埋葬)された後は遺骨を取り出せないため、この点は先に共有してください
- 費用の分担を先に話す — 金額の話を後回しにすると、合意したはずの話が崩れます。見積もりを取ってから、誰がいくら負担するかを決めます
菩提寺には「相談」の形で切り出す
寺院墓地の場合、墓じまいはお寺との付き合い(檀家関係)の見直しでもあります。「墓じまいを決めたので手続きしてください」と通告する形は避け、「お墓の承継に悩んでいる」という相談から入るのが円満に進めるこつです。長年供養を続けてくれた相手への敬意が、結果として手続きも早く進めます。離檀料など費用まわりの注意点は、墓じまいの費用相場で詳しくまとめています。
新しい供養先の選択肢
遺骨の行き先は、承継者(お墓を継ぐ人)がいるかどうかで選び方が変わります。
- 永代供養 — 霊園や寺院が家族に代わって管理・供養を続ける仕組み。継ぐ人がいなくても申し込める
- 樹木葬 — 樹木や草花を墓標にするお墓。多くは永代供養付き
- 納骨堂 — 屋内に遺骨を収蔵する施設。都市部で通いやすい
- このほか、散骨や手元供養という選択肢もあります
宗派・地域・自治体による違い
閉眼供養の作法は宗派や寺院によって異なり、改葬許可の様式や必要書類は自治体によって異なります。この記事は法令と一般的な例のご紹介です。作法は菩提寺に、手続きはお墓のある市区町村に確認するのが確実です。
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よくある質問
改葬許可の申請は自分でできますか?
できます。申請先は、今のお墓がある市区町村です(墓地、埋葬等に関する法律第5条)。申請書に死亡者の氏名や改葬の理由・場所などを記載し、墓地の管理者が作成した埋葬・埋蔵の事実を証する書面などを添えて提出します(同法施行規則第2条)。様式や必要書類の細部は自治体によって異なるため、窓口かサイトで確認してから準備すると二度手間になりません。
遺骨1人分(1体)ごとに許可が必要ですか?
改葬許可申請書には死亡者ごとの情報(本籍・氏名・埋葬の場所や年月日など)を記載することになっています(墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条)。先祖代々のお墓では、誰の遺骨が何体あるのか分からないことも珍しくありません。まず墓地の管理者や親族に確認し、不明な点は申請先の市区町村に相談してください。
お墓の名義人(墓地使用者)が亡くなった祖父のままです。申請できますか?
申請者が墓地使用者本人でない場合は、墓地使用者の改葬についての承諾書などが必要とされています(墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条第2項)。名義人が亡くなっている場合の手続き(承継の届け出など)は墓地・自治体によって扱いが異なるため、先に墓地の管理者と市区町村に確認してください。
離檀料は必ず払わなければいけませんか?
離檀料を義務づける法律はありません。一方で、国民生活センターには、お墓を移そうとしたところ高額な離檀料を求められて話が進まない、といった相談事例が公表されています。長年供養してもらったお礼として包むかどうか、金額をどうするかは、寺院との話し合いで決めるものです。口頭で折り合えないときは、書面でのやり取りに切り替え、お住まいの消費生活センターに相談する方法があります。
墓じまいをせずにお墓を放置するとどうなりますか?
縁故者がいなくなったお墓は「無縁墳墓」として扱われ、墓地の管理者が法令の手続き(官報への掲載と墓地への立札掲示による1年間の公告など)を経て改葬できることが定められています(墓地、埋葬等に関する法律施行規則第3条)。つまり放置を続けると、最終的に遺骨は他の方と合わせて移される可能性があります。管理料の滞納を続ける前に、墓地の管理者へ相談してください。
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